雑念日記

ネットで細々字書きやってる人間が、雑多なことを書く場所

バレンタインSS(ヤミヤミ編)

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 今日はバレンタインですね!!(大嘘)

 ……すいません、間に合いませんでした。

 イラストだけは間に合ったんですけど(ツイッター参照)、SS書いてたら余裕で間に合わなかったです。

 ごめんなさい。

 これであとブラネクとアフドもSS仕上げようとしてるから詰んでる。

 かなり遅れるかもしれないけど許してください。

 バレンタインとはなんだったのか。

 

 それでは、続きからバレンタインSSです。

 楽園で平和に暮らしてた頃(キスしてない一方的にイヴがスキスキ攻撃繰り広げてる時期)設定です。(じゃないとキャラに矛盾がごにょごにょ)

 ちなみに箱庭じゃなくてヤミヤミ蛇毒準拠設定です。

 箱庭もなんとかしないとなぁ……。

 

 

「前途多難なバレンタイン」(バレンタインSS)

 

 今日、二月十四日はバレンタインデイ。
 女子が好きな男子にチョコレートを贈る日、らしい。
 らしい、というのもイヴ自身父から吹き込まれた話なので、本当にそんなイベントが存在するのかは定かではない。
 だが、父がそうなんだ、というのならそうなのだろう。
 よく分からないが、生みの親がそういうのならイヴには抗うすべはない。
 この閉ざされた世界の中で、イヴの視界には限られた情報しかない。
 厨房の窓から飛び込んでくるのは、一面の緑色くらいのものだ。
 
 そういう訳で、なし崩し的にイヴはキッチンに立っていた。
 本命には手作りチョコレートをあげなければならないというので、まさか原材料の育成から始めろとかそういう途方もない次元の話をしているのかと思ったがそうではないらしく、市販のものを溶かして固め直すだけでいいらしい。
 
(それって、手作りに入るの……? )
 
 父から両手で抱えるのがやっと、というサイズの箱いっぱいに入った板チョコを渡されてしまったからには、他に選択肢はない訳なのだが、どうも釈然としない。
 一人で食べるのも限界があるし、これほどまでの量を口にすることを考えると。
 
(ダメだ、胸焼けがしてきた)
 
 ここは大人しくチョコレート作りに励んでおくべきだろう。
 さて、目下の問題は誰に渡すべきかである。
 未来の夫として、当然アダムには渡すべきだろう。それと、材料を提供してくれた父。
 だが、二人だけでこの量を消費できるのかと考えを巡らせてみても、答えは否だ。
 父もアダムも、嫌がることはしないだろう。
 アダムなど、イヴの手作りチョコと聞いただけで泣き崩れる場面がやすやすと想像できる。
 
(いやぁ。でもこの量はちょっと……)
 
 その時、イヴの脳裏に浮かんだのはいけすかない金髪だった。
 よし、あいつなら別に泡を吹いて倒れようが私を責める奴はいない。
 普段散々な目に遭わされているのだ。
 
(白目でも剥いて倒れればいいんだわ)
 
 そうすれば少しはこっちの気持ちも分かるというものだろう。
 思う存分糖分地獄に苦しむがいい。
 箱の中からおもむろに板チョコを一枚取り出し、イヴはほくそ笑んだ。
 アダムと父を苦しめる訳にもいくまい。
 二人分となれば、ホールケーキひとつ、せいぜい5枚、多くて10枚あれば確実に事足りるだろう。
 
(これ、甘いもの嫌いには地獄だろうなぁ)
 
 幸いにして、アダムも父も甘いものは嫌いではなかった筈だが、チョコを湯煎している現段階でキッチの中は甘い匂いで満たされている。
 ちらり、と箱の中に残った板チョコに目をやる。あの量はとてもじゃないが一度で湯煎するのは無理だ。
 レボルトは相当苦しむことになるだろう。
 せめてケーキにでもして緩和してやるべきなのだろうが、そんな気遣いは奴には無用だ。
 そのまま直固めして超巨大板チョコにしてやるくらいがお似合いだろう。
 
 と、ちょうどその時居間の方から足音が聞こえてきた。
 別にやましいことをしている訳ではないというのに、咄嗟にイヴはチョコレートの入った箱の蓋を閉ざし、足でキッチンの隅に押しやっていた。 
 ケーキの生地が入ったボールを手に取り、ヘラでかき混ぜながら、顔を見せたアダムの方へ体を向ける。
 
「なんだ、お前が料理とは珍しいな」
 
「ごめん。やっぱり匂うわよね」
 
 少々顔が引きつってしまう。
 
(やましいことはしてない。……断じて、やましいことはしてない)
 
 していない筈なのだが、どうも悪いことをしている気分になってしまう。
 負い目を感じない訳ではない。
 当てつけのようなものでも、手作りチョコレートを作ろうとしていることに変わりはない。
 
(それに、私は……)
 
「いや、匂いは別に構わないんだが……。チョコレートケーキか? 」
 
「え、ええ。そうなのよ。バレンタイン……? とかいう、イベントらしいんだけど……」
 
 なんだ、またあのろくでなしの思いつきか。
 あからさまに顔をしかめたアダムの心情は、おそらくこうだろう。
 
「好きな男の子に、女の子がチョコレートを贈る日、なんですって」
 
 目に見えて顔付きが変わった。
 こういうところで、アダムは分りやすい。
 無愛想な蛇男より、よっぽど目に見えて好意を表してくれる。
 
「そうか」
 
 一度目は夢現つ。
 
「……そうか」
 
 二度目は嚙みしめるように。
 頭の周りにお花か蝶々でも飛んでいそうだ。
 大の男が何を頬を赤らめているんだという話だが、この人のこんな顔も見慣れたものだ。
 だからこそ、申し訳ない。
 
「イヴ」
 
 自分のしている行為がとんでもない裏切りだということを、思い知らされる羽目になる。
 
「俺はその、甘いものは嫌いじゃない」
 
「知ってるわよ」
 
 作業に戻ろうと、スカートの裾を翻しアダムに背を向ける。
 丁度チョコレートも溶けてきた頃だろう。
 
「イヴ」
 
 不意に、声が頭上から飛んできた。
 
「楽しみにしてる」
 
 見上げれば、先ほどまで扉付近にいたアダムがすぐ横に立っていた。
 イヴの髪に軽く指を通し、絡まった髪を解きほぐしていく。
 落とされる微笑みは酷く穏やかだ。
 この手の中にあるものは、紛れもなくイヴがアダムに向けたものだ。
 それだけが、二人にとって唯一の救いだろう。
 
「火傷だけはしないようにな」
 
 最後にそれだけを言い残し、アダムは上機嫌にキッチンを後にした。
 視界の隅、湯煎途中のチョコレートと部屋の隅に置かれた箱が写り込んでくる。
 チョコレートと生地を混ぜながら、イヴは静かに目を伏せた。
 
 材料が余ってしまったから。
 アダムに体を壊してほしくないから。
 そんな免罪符に甘んじている自分が、一番卑怯だ。
 
 
*  *  *
 
「あげる」
 
 その日の昼、珍しくイヴが林檎の木の下に訪れなかった。
 これまで長かったが、ようやく諦めがついたのかとレボルトは一人安堵半分、正直に言ってしまえば残念半分だったのだが、どうやら事はそう単純でも、甘くもなかったらしい。
 これまた珍しく、その日の晩にレボルトの元を訪ねてきた少女は、巨大な梱包物を小脇に抱えていた。
 ご丁寧にリボンでラッピングまでされたそれをレボルトに対して差し出し、いい笑顔と表現すればいいのか、それともやりきった顔と表現すればいいのか、なんとも形容しがたい表情で口角を吊り上げるさまには、言葉にならない邪悪さを感じた。
 
「言っておくけど、残さず食べてね」
 
 「残さず」の部分を過剰に強調し、イヴはレボルトの胸に両手でぐいぐいと箱を押し当てた。
 
「……これ、食べ物なんですか」
 
 眼下の少女の顔と箱を交互に見比べた末、レボルトの口から苦し紛れにこぼれ落ちた第一声はそれだった。
 
「そうよ」
 
「いや、別に食べること自体は問題ないんですが……そのサイズはどう考えても鈍器――」
 
「なんか言った? 」
 
「なんでもありません。……それで? 」
 
「それでって何」
 
「だから中身ですよ。食べ物と言っても、守備範囲が広すぎるでしょうが」
 
 馬鹿かお前は、夜空をバックにそう言いたげに眉をしかめて見せた男に、イヴも釣られ眉を吊り上げていた。
 
「チョコレート。その……一応、私の手作りだから」
 
「……豆から育てたんですか」
 
 それはまた随分重い贈り物だと遠い目をした男に、イヴは容赦なく冷たい視線を向けた。
 悔しいが、発想が完全に同じだ。変なところで意見を合致させないでほしい。
 
「んな訳ないでしょうが。溶かして、固めただけよ」
 
「それって手作りと言えるんですか? 」
 
「思った! 私も思ったけどそれについてはもう触れないで! 仕方ないじゃない!? お父様が今日はそういう日だって大量のチョコレートを渡してきたんだから!! 私にどうしろっていうの! 一人で全部食べろとでも!? 無理に決まってるでしょう!? 察してよ! レボルトの馬鹿! 分からず屋!! あんたなんか鼻血出して死ねばいいのよ!! 」
 
 真っ赤な顔を押さえその場にしゃがみ込んだイヴに、ああ、良かった。馬鹿ではなかったのかとレボルトは安堵した。
 取り乱す少女を前に安堵するというのも変な話ではあるが、レボルトは地面に座り込んだイヴに駆け寄ると、自身もその場にしゃがみ込んだ。
 
「分かりましたよ。一応、最善は尽くしてみます」
 
 それ、と顎で傍に置かれた箱を示し、レボルトはイヴの肩をそっと叩いた。
 いくらなんでも、一人で食べるには量が多すぎる。
 人外とはいえ、レボルトの胃袋にも限界というものがある。
 
「……今日は、バレンタインデイなんですって」
 
「なんですか、それ」
 
 それきり下を向いたまま黙り込んだイヴの代わりに口を開いたのは、白い蛇だった。
 林檎の樹の上からそれまで黙って事の成り行きを見ていた蛇は、昼間のイヴと父親とのやり取りを思い浮かべながら、レボルトの耳元で囁いた。
 
「――食べます」
 
 事情を聴き終えたレボルトは、地面に置かれた箱を力強く引き寄せた。
 どっしりとイヴに向き合って座り込み、包み紙を開けていく。
 食べるとは言ったものの、こうしていざ茶色い物体と対面すると足元から血の気が引いていく。
 対するイヴは、呆気にとられた様子でまじまじとレボルトの顔を凝視していた。
 
「……食べればいいんでしょう。食べれば」
 
 やけくそ気味に呟き、レボルトは覚悟を決めた。
 やめといた方がいいんじゃないか。
 そう言いたげな白蛇に無視を決め込み、レボルトは盛大にチョコレートに噛り付いた。
 
 その様子をイヴが傍でほくそ笑みながら見ていたのにレボルトが気付くのは、もう少しあとのこと。
 
 
――――――
 
 
レボルト「二度と食べたくないですね(口元を押さえながら)」←だたし完食
イヴ「来年も持ってくるから、せいぜい苦しんでね(満面の笑み)」
レボルト(……このアマ)
 
 とか言いながらレボルトなら絶対食べる。
 というか内心まんざらでもないどころか狂喜乱舞してる。
 

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 一応、無事にこの二人なりにいちゃいちゃしてんなって感じで。

 

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 これはまぁ、ネタ絵的に楽しんでくださいって感じで。

 本編であんまり呼んでないからたまには「アダム兄」って呼ばせとくかっていうガバガバ設定。

 

 というか本編更新しろよ。